1987年製作の映画「ベルリン・天使の詩」について。
冒頭でこんな詩が紹介される。
「子どもが子どもだった頃、両腕をぶらぶらさせながら小川が川に、川が河に、水たまりが海になればいい、と思ってた。」(also das kind kind war、、、)
というペーター・ハントケの美しい詩は、この映画の根底に流れるテーマみたいだ。(彼はこの映画の脚本も担当)
わたしは、35年以上前に妹とともにこの映画を観た。
監督はヴィム・ヴェンダース。
(↑こちらは、今回の午前10時の映画祭14のフライヤーより抜粋。)
当時は、かなり前宣伝が良かったのだけれど、、正直言って、まあ退屈であった。
10代の時に背伸びして見に行ったが、前半はモノクロで単調な感じがした。天使が人間になるところから色彩のある世界になった。しかし、セリフは独白がおおく、「どういう意味なんだろう」と腹落ちしないまま、映画は続く。
登場人物のひとりの、空中ブランコ乗りの可愛いマリオンは、フランス語で独り言をいうから美しい歌のように感じるが、実はけっこうしんみりする内容だったりする。
今回、TOHOシネマズの午前10時の映画祭(とはいっても9時開始!!)で、4Kの公開があるというのでどきどきしながら、見に行った。なぜかというと、「また、この映画はわかんないまま終わってしまうのでは?」という不安感と「いや、いまなら分かるかも」という期待感が入り交じってたからだ。
結局、不安の部分は的中せず、わたしはなんとか映画を見終わった。
わたしは、十分大人になっていたらしいww
内容は、
天使のミカエル(ブルーノガンツ)とカシエル(オットーザンダー)が何億年間もすごした親友なのだが、あるときミカエルがマリオンというサーカスの空中ブランコ乗りの女の子(とっても美人)を大好きになってしまって、、ついに地上におりて人間になることを決める話なのだ。
こう書くと、ものすごいハンサムな、羽をつけた天使男子と、天使みたいにきれいな女性との恋ものがたり、と思えるが
全く違う!
天使はおじさん(40代と思われる)、マリオンは20代というけっこうな年の差の愛情なのだから。しかも、2人の天使たちは、背中に羽をつけておらずごく普通の背広をきたおじさんたちなのだ。
これが、当時のわたしの入り込めなかった部分なのかなあ、、
別に人魚姫みたいな王子様とお姫様を期待してたわけではないけど、マリオンが可愛いのに「あんまりだ!」と思ってたカモ。
しかしだ、
これは観念的な映画なのだ。目に見えるのはおじさん(しかも何億歳だかわからない、地球の創成期からいたから)だが、実際は恋をしてワクワクしてしまった二人の愛情物語なのだから。何億歳かの天使おじさんなんて、まるで仙人みたいだ。つまり、絶対あり得ないような夢ものがたり。これは1987年に起きた、現代のメルヘンだったのか。
この映画の中で天使はいたるところにいる。
子どもにはたまに見えたりするけど、
大人には見えない。
特にベルリンの図書館には、天使がわんさか座っている。
勉強してる人の横にいるか、てすりに座ってるか、子どもの宿題をみてあげるか、ペンをいたずらするか、、こんな感じ。
あとは、天使は町中にもいる。
「女房に逃げられた。いろいろうまくいかない。人生は終わりだ」と嘆いているおじさんの方にそっと手をかけてあげる。
そうすると、落ち込んでいたおじさんが「はっ、俺はおわりなんかじゃない。そうだ、うちの親もそういってたんじゃないか。人生はやり直せる!」と急に顔を上げていきいきする。
仲間外れにされた子どもが「ぼく、かわいそうなんだ。仲間外れなんだ」とひとりごとをいっているが、その子にも天使がそっと慰めてくれる。
死にゆくひとには、一緒に詩を読み上げてこころ安らかにしてくれる。
もちろん、孤独を感じるマリオンも包み込むように守ってくれる。(だから、マリオンは見えない彼を好きになってしまうんだけど)
この映画のみどころ
それはずばり、こどもの場面。
3つあげてみたい。
まず、子供向けのサーカスで、マリオンが登場するシーン。
ここで、ミカエルは、最初は
隣の女の子にしきりに話しかけられるんだけど、
このマリオンの空中の踊りシーンが始まると、その女の子は、その後まったく話さず、舞台をみつめたまましーん、と身動きもしない。まさにマリオンに魅入られたのだ。私もハッとした。
女の子は、マリオンの「緊張感の中に咲く美しさ」とか、「サーカスへ真摯にむきあうさま」に、深く共鳴したのかもしれない。
次に、ミカエルが天使から人間になったあとに、ドリフの大爆笑みたいにうえからタライ、ではなく博物館にあるようなよろいが「がーーん」と空から落ちてくるんだけど、ミカエルは痛いのなんのって。それをみたこどもたちは「なんだ?あのひと酔っ払いか?」といって片付けてしまう。いや、空からおちたよろい、見てなかったんかい?と
ちょっとつっこみたくなったけどね。
最後に出会うこどもたち。
人間になったミカエルが、ポツダム広場で公演をおこなっていたマリオンに逢いにきたのだが、すでに撤去してあることにがく然とする。
そして、白い砂の部分で、ほんとに子供のようにしょげて、体育座りをしている。
そこへ子どもたちがやってくる。
「おじさん、どうしたの?」
「どこかいたいの?」(←優しい、、、)
彼は答える。
「いや、(何かが)ないんだ、、、」そしてうなだれる。
こどもたちは「ああ~そう、、」といって去っていく。
そのあと、「あの人は『何かないって』いうけど、飲み物とかたべものがないんだろうね」と話してる。
思い返すと、こどもたちは、天使から人間になったミカエルに優しいんだよ(涙)
とりあえず、大人にたいしても、自分たちの仲間みたいにちゃんと「人間らしく」対応してくれてる。なんていうか、元天使にとっては「ただ、みていてくれてる」だけでもありがたい、と思う。
以上、みどころでした。(私の見解による)
でも、よかったら
皆様のたいせつな映画になるかもしれませんのでおすすめします。
ちなみに、35年たっても「この映画の意味、わからなかった」でも、私は良かったと思います。その後の人生にまたこの映画を観る機会があったら、またどきどきしながらトライしたでしょうから。
終
p.s.
この映画のなかで、とても大好きなキャラで、とてもとても良かったのは
ずばり、「ピーター・フォーク」です。そう、かの有名な「コロンボ刑事」の役そのまんまで出演中です。
このひとがしゃべったり、絵を描いたりする場面だけ「動」の場面になり、モノクロ場面に色がついてるみたい。
ピーターフォークが一番、この映画の天使なんじゃないの!?と思ってしまいます。
終
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